2007年09月08日

ちょっとだけ真面目な業界的裏話

え〜、今回は食に関してかなり堅い話をいたします。
ややこしい話ですし、興味が持てないよと言う方はスルーしていただいて
結構でございます。
今回はオチも何もありはしません。
たぶんないと思います。
ひょっとしたらあるかも知れない。
ま、ちょっと覚悟だけはしておいて・・・(ぉぃっ!)仕事で加工食品を扱っている身としてここ近年の食品業界における
不祥事は対岸の火事という訳にはいかない。

「食の安全」という言葉がささやかれ出して結構時間が経つように感じるが
これが大々的に取りざたされるようになったのは割りと最近である。
発端は平成14年の乳業では最大手の会社が起こした不正表示問題で、
これを機に施行以来60数年間全くの手付かずだった食品衛生法及び
「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(通称:JAS法)が
改正されることになった。

これだけ国内の食事情が変化しているのに何十年も法令の改正が行われなかった
というのもオドロキだが、それにはそれで表に出せない「お役所的」事情が
あるんだろうな、きっと。
多くは語れないが、ザル法の隙間をかいくぐって甘い汁を吸う奴は
どこにだっているってことだ。
それが誰とかどういう仕組みだとかは詳しくは知らんし、知っていても
うっかり言えば社会的に抹殺されるのが関の山かな?(恐)

「食」を所管する省庁は2つあって、ひとつは厚生労働省、もうひとつは
農林水産省である。
厚労省が管轄する「食品衛生法」
農水省が管轄する「JAS法」
という、昔の縦割り行政の悪しき名残りがここにも存在し、どちらか一方で
片付くような単純な話をより複雑かつ不透明なものにしている。

単に「食」というカテゴリーだけで捉えるなら厚生労働省だけでいいのだが
その「材料」まで含むとなれば農林水産省が登場せざるを得ないというのと
ひとつの省庁だけでは業務も煩雑になり、とても掌握しきれないというのが
その理由ではあるが、はてさて・・・。
杜撰なチェックで問題が大きくなってからあわてて動き出したBSE問題など
省みるに、大した情報収集能力も問題解決能力も持ち合わせていないように
感じるのは僕だけか・・・な?


随分、長い前置きになってしまったが
(ぉぃぉぃ、今のが前置きかよっ!というツッコミはありましょうが)
時折聞かれる「消費期限」と「賞味期限」についてちょっと触れてみたい。
かつては「品質保持期限」(JAS法)という言い方もあったが、現在は
「賞味期限」に統合された。

「消費期限」と「賞味期限」この2つの食物に付けられた期限には
明確な線引きが存在する。


1)「消費期限」とは、
  定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の
  品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと
  認められる期限を示す年月日をいう。
  その期限とは製造日を含めておおむね5日以内で容器包装を
  開封する前の期限を示すものである。
  
  消費期限を表示すべき食品には、例えば、弁当、調理パン、そうざい、
  生菓子類、食肉、生めん類などがある。

2)「賞味期限」とは、
  定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての
  品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。
  ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されて
  いることがあるものとする。
  「賞味期限」は、「消費期限」に比べ、品質が比較的劣化しにくい食品等に
  表示する期限表示の用語であり、「消費期限」と同様、容器包装を
  開封する前の期限を示すものである。
  
  賞味期限を表示すべき食品は、消費期限を表示すべき食品以外の食品であり、
  例えば、スナック菓子、即席めん類、缶詰、牛乳、乳製品などがある。

平たく言えば、「未開封の状態で」「製造日を含めておおむね5日以内で」
腐敗その他品質が悪くなって口にすると危険ですよというのが「消費期限」、
それ以外のもので多少置いておいても平気だよというのが「賞味期限」と
いうことになる。


ここで注目すべきは「牛乳」や「乳製品」が「賞味期限」のカテゴリーに
入れられていることだ。
ふ〜ん、牛乳ね。昔は痛みやすい食品の代表だったような気がするが・・・。
と思って調べたら、全ての牛乳がそうではなく、一部低温殺菌牛乳
(62℃〜65℃で30分加熱殺菌)は「消費期限」、120℃で3秒加熱殺菌する
高温殺菌牛乳や130℃で加熱殺菌する超高温殺菌牛乳は「賞味期限」の
カテゴリーらしい。
確かに製造・加工・包装などの技術が発達して、昔に比べると長期保存が
可能になった食品も随分増えたもんだ。


もうひとつ興味深いのは次の表現だ。

期限表示の対象となる食品は、

1  一般消費者に直接販売される食品のうち、加工食品(食品衛生法で加工食品に
  分類される生かき、食肉等の食品を含む。)、かんきつ類、バナナ、及び食品添加物

2  一般消費者に直接販売されず、業者間で取引されるいわゆる業務用の加工食品
  (食品衛生法で加工食品に分類されない塩蔵・塩干・乾燥魚介類、乾燥野菜、
  乾燥果実等を除く。)及び食品添加物

「生かき」「食肉」は食品衛生法では加工食品に分類され、
「塩蔵」「塩干」「乾燥魚介類」「乾燥野菜」「乾燥果実」は加工食品ではないとしている。

殻を外すだけの生かきや切り分けるだけの食肉は「加工食品」で、
塩漬けにしたり乾燥させたり面倒な手間がかかるものは「加工食品」ではない???
ま、何ちゅうか、ツッコミどころが多いな(苦笑)。

さらにツッコミどころがあるのが、こういう記述。

食品等事業者においては、客観的な期限の設定のために、微生物試験、理化学試験、
官能試験等含め、これまで商品の開発・営業等により蓄積した経験や知識等を有効に
活用することにより、科学的・合理的な根拠に基づいて期限を設定することが必要になる。

※食品等事業者とは食品を輸入したり製造したり加工したり、あるいは販売したりに
携わる事業者全般のこと。

※官能試験とはエッチな試験ではなく(爆)、主にお米に対する食味官能試験を
略して言う言葉である。大きさとか形とか外観上識別可能なところから始まって
水分含有量とかお米自体の粘度とかいろんな項目を試験するわけである。

この一文をもっと分かりやすく言えば、期限を設定する権限はあくまで業者の
自由に委ねるということ。
極端な言い方をすれば、煩雑な試験とか経験や知識の蓄積は行政には出来っこないから
業者にお任せしますよ。ただし、何かあってもそれはそちらで責任持ってくださいね。
という、「民間に丸投げ」状態(唖然)。
しかも、食中毒とか何らかの事件でも発生しない限り、期限表示に不備があったからといって
特に罰則らしいものは無い。これが「ザル法」と言われる所以である。
ぁ、スマン、言い過ぎた。

確かに北海道の最大手乳業や奇しくも同じく北海道の老舗菓子メーカーや伝統的キャラクターを
擁するこちらも老舗菓子メーカーが起こした不当表示の問題は世間に対して
不実なことをしたという道義的責任は重いかも知れない。
しかし、実際に現場サイドでだけ物事を考えたら
「口に入れて問題が無いものを再利用しただけで、何が悪い?」という理屈もある。
製造側は製造側で「ロスなく効率よく製造」というQCやISOなどの会社組織的
締め付けに翻弄されて判断を誤ったのかも知れない。
大手や老舗と呼ばれるところほどコスト管理には厳しいものがある。

しかもそれら全てが従業員の内部告発によって発覚したものだ。
内輪の事情を知る人間以外に外部からその事実を知りうることは少ないというのは
恐ろしいことじゃないのかな?

もちろん、食品製造や加工に関しては行政や取引先からの視察(通称「品管」)が
定期的に実施されている。
しかし、わずか短時間で実施されているような品管では得られる情報がそれほど
多くはない。
あくまで食を支える事業者が真摯な態度でこういう問題に取り組まなければ
発覚した事件が氷山の一角に過ぎないと言われても仕方が無い。

例えば僕が関わっている某加工食品メーカーは温度管理・品質管理にとてもうるさいし
出来上がった製品を色んな環境下で経過観察を行ったり、微生物試験もこまめに行っている。
そういうメーカーばかりならそう心配も要らないんだろうけどね。

「食の安全」についてはまだまだ言い足りないことが多いが、一応「食」に関わる身として
最近気になる話題でもあるのでこういう文章を上梓してみた。
また体力があるときに違う話を書いてみるかも知れない。

最後まで読み辛い文章にお付き合いいただいてありがとうございます。


     文責 地味・・・偏
posted by 地味・・・偏 at 03:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初カキコです。
大変勉強になりました(笑)
牛乳についての消費期限と賞味期限は気になっていたので何だかスッキリしました。

>官能試験
この言葉を初めて聞いたとき、ちょっとそわそわしました。(笑)
Posted by toshi at 2007年09月09日 21:18
★toshiさん

レスが遅くなり、大変失礼しました。
自分でキリ番踏むとマズイので昨日は控えておりました。

低温殺菌牛乳の消費期限が残り2日の場合と
高温殺菌牛乳の賞味期限が残り4日の場合では
低温殺菌牛乳の方が製造が新しいという事実は
意外と認識されていないのが現状です。

僕も「官能試験」という言葉を始めて聞いたとき
川上宗薫とか宇野鴻一郎の名前が頭をよぎりました(照)。
Posted by 地味・・・偏 at 2007年09月10日 10:34
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